近い将来には、人の遺伝情報全体が明らかになることでしょう。その結果、タンパク質の構造とシグナルを推測することもできるようになるはずです。この知識によって、病気になる過程を解明し、新しい治療法の開発につながるかもしれません。インスリン、成長ホルモン、エリスロポエチン、インターフェロンなどのように、タンパク質の形でつくられているクスリがありますが、タンパク質は複雑で、とても化学合成ではつくることができないので、通常、目的とするタンパク質(インスリン、成長ホルモンなど)をつくる遺伝子を細菌に組み込んで、細菌にタンパク質をつくってもらっています。しかし、細菌には位置シグナル(信号)を持つタンパク質をつくることはできないため、位置シグナルを持った、より機能的なタンパク質のクスリにするためには、細菌よりもっと高等な酵母細胞のような細胞につくってもらう必要があるのです。そこで、遺伝子技術を使って、つくりたいタンパク質の遺伝子を、位置シグナルとともに酵母の遺伝子に組み込みます。そうすればその酵母細胞を、位置シグナルも持っているタンパク質をつくる「工場」として利用できるからです。さらに、ある欠点を正すために、特定の細胞内器官をターゲットとした新しいクスリの開発が可能になります。もともと付いている住所札(位置シグナル)を利用したり、目的地の書かれた別の住所札(位置シグナル)を付けたりした、運び役のタンパク質に、運びたいクスリを結合させればいいのです。