展開する異文化間の交流

2011.07.03

自己を保ちつつ、未知の文化出身の人々と関わる方略を子どもは知っている。その感知を遠ざけているものは、伝統的な学問の知である。アメリカ合衆国インディアナ大学のビル・コルサロ教授は、子ども文化のフィールド研究の指導を受けるために訪問した私に自宅を滞在先として提供し、そのことを、身をもって教えてくれた。当時、7歳になるお子さんとの関わりが、私にとって、コルサロ家で心地よい居場所をもたらすことは、彼には織り込み済みであった。アメリカ合衆国インディアナ州で生まれ育ったコルサロ教授が、かぎられたイタリア語を駆使して、北イタリアの就学前教育機関で、比較民族誌的研究に関わるフィールドワークを実施した、自身の経験と重なってのことだった。コルサロ教授の思惑どおり、私は、コルサロのお子さんとの関わりを媒介に、家族内での居場所を得るだけでなく、コルサロ教授のパートナー、子ども、母親、パートナーの母親や妹、そして、就学前教育機関のスタッフ、小学校のスタッフ、大学の同僚との関わりが次々に実現していった。それには、7歳の子どもの提案と貢献が少なからず含まれている。極東出身の大人である私と未知の家族・地城の人々とをとり結ぶ「子どもの実践知」は、それ自体、興味深い研究テーマである。保育実践のなかで、子どもが子ども同士の関わりにおいて展開する異文化間の交流は、もっと豊かな様相を呈しているにもかかわらず、伝統的な学問の関心からは、ほとんどすくいあげられてこなかった。

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