四つの白い光のイノベーションを実現

2011.07.14

約137億年前のある瞬間にビッグバンが起こって宇宙が生まれた。そもそも、光はこのときに生まれたのだから、光の話をするとしたらここから始めなければならないのだが、光が宇宙への旅を始めたのは、その瞬間から数十万年たってからである。その最初の光は137億年の間旅を続け、宇宙を満たしているのだが、人類がそのことに気づいたのは、ごく最近のことだ。1964年、ペル研究所のアルノーペンジアスとロバートーウイルソンが観測した「宇宙背景放射」が、その最初の光の痕跡である。旅をはじめたときの熱い宇宙を満たしていた光は、ずっと波長の短いものだったはずだ。しかし、観測されたときは、波長数センチのマイクロ波になっていた。なんで、こんなことが起こるのだろう。遠くにある星から光は、波長が長いほう(色で言うと赤いほう)にずれて観測される(ドップラー効果)。宇宙は開閥以来膨張を続けているため、天体は、観測者である私たちのいる地球からどんどん遠ざかっているからだ。原初の光が、現在波長の長いマイクロ波として観測されるのも、同じ理由である。現在の地球上に降り注いでいる光は、約50億年前に誕生した太陽からの光である。その光を受けてまっ暗な宇宙のなかで地球が輝いたのは、その約4億年後である。地球の混乱が落ち着き、およそ200万年前に人類の祖先である猿人が誕生し、太陽からの白い光を浴びて地球上を歩きまわるようになった。そして、およそ50万年前に原人たちは炎を自由に操ることを覚え、その子孫たちは太陽と同じような白い光の明かりを、自らの手でつくりだす試みにとりかかった。この本では、その歴史を眺めてきたわけであるが、炎の黄色い光を明かりとして使ってきたじつに長い経過の後あと、およそ150年前から現在に至るまでのわずかな間に、人類は立て続けに、白熱ガス灯・白熱電球・白色蛍光灯・白色発光ダイオード(LED)という四つの白い光のイノベーションを実現させた。驚くべきことである。多くの先人たちの智恵と努力によって、私たちは昼の太陽の光と同じように、夜の闇も白い光のもとで快適に暮らせるようになった。原人たちの夢−むろん、もしそんな夢があったとしたらであるが、その夢が実現したのだ。夜の地球は太陽の力を借りなくても、人類が自らつくった白い光で輝くようになった。宇宙の数ある星のなかでも、とてもめずらしい星だと思う。