面倒な関係だからこそ結ばれている安心感がある

2011.06.13

結婚して籍が入ることで、気持ちの面だけでなく、法的にも結ばれる。「家族」という、社会的にも認められた、もうあやふやではない関係になって、男は外で何をしていようが、妻の待つ家に毎日帰ってくるようになる。恋人と妻はどう違うのかと考えたときに、真っ先に思い浮かべるのは、やはり「安定感」のあるなしだと思うんです。男にとって妻というのは、「ただいま」と言って帰ってくる場所。結婚というのは、自分の「所属」ができるということなんです。結婚式を挙げて「家族」という立場になると、お互いの両親だとか、親戚づき合いだとか、結婚しなかったら自分には関係なかったであろう人間関係が広かっていく。妻の実家とのつき合いはもちろんだけど、たとえば全然会ったことのないような親戚の結婚式にも行かなくてはいけないし、お祝いだって出さなくてはならないこともある。それはまるで、自分ではちょっと挿し木したつもりが、いつのまにか「こんなところにまで根を生やしてきている!」というような、竹林の増え方に似ています。知らないうちに、いろいろなところに根が張り始めて、そうなると男だってもう簡単には逃げられない状態になってくる。法律だけの関係だったら、もっとドライになれるのかもしれないけれど、法律の下に、妻を触媒とした人間関係の根っこがぐんぐんと張ってくるわけなんです。でも男は、その根っこをいらないと思っているわけではないんです。男性の中には一回離婚した後にも、また何回も離婚を繰り返す人がいます。そういう人は、単に「籍を抜く」という法的な手続き以外にも、相手の親や親戚という根っこを、ガサッと引き抜くことにあまり抵抗感がない。一度それをしてしまうと、「なんだ、簡単じゃないか」と思えて、同じことを繰り返してしまうのかもしれませんでも、それはごくごく稀なケースで、たいていの男たちは、そう簡単には所属を変えられない。移籍できないんです。竹林のように根を張っていく人間関係を重たいとか面倒だと思う反面、男にとっても、そこに結ばれているという安心感が育っていくんです。女性は結婚しても、ドキドキするようなときめきを失いたくない、緊張感をたもっていたいと思うのかもしれませんが、でもそれがなくなるかわりに、結婚は、法的にも結ばれた「安心感」を持ってきてくれるんです。「安心感」と「緊張感」は正反対のものだから、共存することはあり得ない。不倫の恋がなぜ燃えるかというと、簡単に言ってしまえば、そこに「安定感」がないからなんです。法的にも認められていないし、会うのにも人目を避けなくてはいけない。安心感からは程遠い、男と女の苦しいまでの情念というのが二人を結びつけているんです。そんな緊張感よりも、安定感のほうがずっと心にも体にもいい。恋人にはない妻のメリットは、そんなところにあるのではないでしょうか。